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【インタビュー】2014.2.6 株式会社 図書館流通センター 教育・環境企画部長 細川 博史 様
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●図書館流通センター(TRC)の会社のご紹介をお願いいたします。

株式会社図書館流通センター(以下、TRC)は、1979年12月に発足し、今年で35年目になります。学校や公共の図書館に特化し、貸出をするために必要な加工(装備)を施した図書の販売(年間1,200万冊の実績)や、資料を検索するためのデータベース(MARC)の制作と頒布が基幹業務です。現在、全国公共図書館の85%にあたる、約2,800館でこのサービスをご利用いただいています。 1990年代から図書館の業務の受託や指定管理者としての運営などが増え、2014年2月現在全国で390館の図書館を受託運営しています。 図書館のミッションは、国そして地域の知的インフラとして存在することです。図書館が利用されることで知的生産活動が活発に行なわれ、沢山の自立した市民をつくることが本来の目的であると考えており、TRCではこれを念頭に業務を行なっています。

●2013年9月にTRCさんがKooNeを神戸市立東灘図書館にご提案いただいた経緯を教えてください。

東灘図書館は2013年9月23日に新設オープンされました。その数カ月前に、当社が指定管理者として運営することは決まっており、いくつかの新しいサービスを展開するべく企画を模索していました。図書館が単に本を貸し出すだけの施設ではなく、「場所」としての存在意義を持たせ “空間自体をサービスとして提供する”。これを実現するための手段としてKooNeが適しているのではと思ったのです。
KooNeの導入を盛り込んだ企画をTRC大阪支社長に伝えたところ、すぐさま神戸市へ提案されることになり、当該企画の実施について市から了承いただきました。新しい図書館づくりに向け、air aroma japan社の香りと合わせて「音と香りによる快適空間」と題し、新しい空間サービスの提供を目指しました。
また、この空間を提供することで、図書館が足を運びたくなるような場所として受け入れてもらえたら、という思いもありました。
特にこれといった目的がなくても、図書館に行くことがステイタスになったり、何か面白いものに出会える場所としてのイメージです。新しいコンセプトの図書館を目指したことで、神戸市が持つお洒落な都市としてのイメージ作りにも、一役かうことができたのではないかと思っています。

●東灘図書館は、どんな目的や期待をもってKooNeを導入されたのでしょうか。

図書館は、各自治体によってそれぞれ利用環境が異なります。そして自治体が管理運営する施設である以上、その施設を存続し運営していくには地域の人々に有効に利用されていることが重要です。そのため、施設の有効性や利便性を図るにあたり、ある指標が必要になりますが、その一つが来館者数や蔵書の貸出回数のような数値です。
東灘図書館においても課題は同様ですが、今回、KooNeとアロマを利用した「音と香りによる快適空間」は、来館者が読書などに集中またはリラックスできる場を施設内に提供することで、人が集まりコミュニティが生まれる場所として、図書館の存在価値を新たに作り出すことが主目的でした。結果的には立地の良さもあり予想以上の来館があるようで、来館者数や貸出冊数も順調に伸びているとお聞きしています。この空間がその付加価値になっていると思います。

●細川さんが初めてKooNeを体感した際に、実感されたことはどんなことですか?

私が初めてKooNeを体験したのは、渋谷にあるビクターエンタテインメントのデモ・ルームで、エグゼクティブ・プロデューサーの榎本さんにご説明いただきました。部屋に入った瞬間は、なにか音が鳴っているなという程度でKooNeについて強く感じることはなかったのですが、座って説明を聞いている途中、30分程たったころでしょうか、「一度、音を消してみましょう」と一瞬音が切られたとき、音のある場と音の無い場での環境の違いに愕然としたことを強烈に覚えています。人と音の関係は普段気がつかないのですが、大きく作用しているんだな、と音の重要性に気づきました。
また、人は無音の状態にストレスを感じると、それを防御するために寝ようとしてしまうのだという話を聞き、言われてみれば図書館の閲覧コーナーなど、人が集まる空間は静かであればあるほど緊張するなと。キーボードの音が気になったり、ペンを落としたらみんなが見たり。寝ている人もちらほら。
図書館の滞在環境こそ、この「音」に配慮したサービスが必要なのではないかなと思いましたね。

●最初の体感でTRCさんのスタッフ、東灘図書館のスタッフのみなさんはどのようなに感じられていたでしょうか?

正直なところ、開館直前に施工されたので、当社スタッフは準備におおわらわでまともにKooNeについての感想などを聞ける状態ではなかったのですが、東灘図書館長をはじめ主要なスタッフは、この空間の提供を新しい試みとして来館者他、各所に積極的にアピールしていました。 館長は、KooNeについてのプレゼンテーションで、その音を体感した際、直観的にこれからの図書館運営において必要なものであり、KooNeと香の空間が来館される方にとって居心地の良さを提供できるのと同時に、図書館スタッフにとっても有意義なものとして思われたようです。自分の職場がそんな環境にあったら嬉しいのは当たり前ですね。お客さまとスタッフ、すべてのヒトにやさしいサービスです。

●東灘図書館にKooNe導入後の図書館のスタッフや、利用者の反応などありましたら教えてください。

開館当日は10,000人の来館がありました。1,500㎡足らずの図書館としてはこれまでに聞いたことのない来場者数で、その日はその日は夕刻までずっと入場制限がかかっていましたね。現在でも平日1,000人を超える来館者のある人気スポットですので、KooNeを設置した閲覧コーナーはいつも席が埋まっている状態です。
館長から聞いたところによれば、若い人は特に閲覧コーナーでの雑音や喧騒を避けるために、イヤホンで音楽を聴きながら本を読んでいたりするのですが、段々とそういう人が減ってきているとのことです。KooNeによる自然音が雑音や喧騒といったノイズを緩和して居心地をよく変える効果があるのかもしれません。音や香りなど感性に訴えるものは、本来自然にさりげなく演出したいと思っているので、こういう現象はとても嬉しいことでした。 また、壁と人との距離による圧迫感を軽減する効果もあるようですね。夕刻の自然音と窓から見える庭園の風景が相まって、心地よい空間演出になっているとの感想も出ているようです。

●今回、TRCさんの本社ショールームにもKooNeをご導入いただきましたが、今後KooNeに期待することがありましたら教えてください。

本来の良い音(原音)を追求しているという意味で、この企画は「音の老舗」であるビクターさんらしい試みだと思っています。
図書館には「静か」であることが半ば義務付けられているような常識があり、KooNeの存在によって、人が本来快適と感じられる環境を一から見直す、画期的な機会が得られているのではないかと思います。図書館本来の目的を達成するための環境づくりに、これからもどんどん提案していくつもりです。
ビクターさんには是非、もっと音のバリエーションを増やしていただければなあと思っています。地域の環境によっては、オーダーの音源も必要になるかもしれませんね。各図書館は、自治体のカラーを重要視していて、その地域の情報発信地にもなっています。故郷の山や川の音が流れている図書館など、そういった独自性を演出できる音源などあれば面白いと思います。これからが楽しみです。

■インタビュー後記■

図書館という公共施設を運営管理されている方に抱く真面目なイメージを振り払った、情熱的なアイディア・マンという印象の不思議な魅力をもった細川さん。「図書館の活用→知的生産活動のアクティブ化→自立した市民増」といった大きなビジョンを持って新しい図書館創りを目指されているその姿勢に敬意を表するとともに、熱くそして真摯に語られる図書館という存在、図書館利用者や図書館スタッフへの思いから生まれた「音と香りによる快適空間」にKooNeを活用いただけたことに感謝致します。

Interviewer:ビクターエンタテインメント(株)エンタテインメント・ラボ 岡崎早苗