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CFOメッセージ



2024年9月27日更新


資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を行い、PBRのさらなる上昇を目指します。

2023年度の振り返りと今後の目標


中期経営計画「VISION2025」では、株価をより意識した経営に向けて、業績改善により事業基盤をさらに強固にするだけではなく、株主還元の充実や財務・資本戦略を実行することによって資本効率の改善を図るとともに、サステナビリティ経営を推進して企業価値の最大化を図り、PBR1.0倍超の早期実現を基本戦略として掲げています。

その初年度である2023年度は、売上収益3,595億円、事業利益197億円(事業利益率5.5%)、ROE12.2%、ROIC8.9%、親会社所有者帰属持分比率36.2%と、期初に発表した業績予想を大幅に上回り「VISION2025」の最終年度である2025年度の数値目標の大部分を達成することができました。

また、株主還元についても2度の自己株式取得を実施するなど積極的に行ってきたことなどから、PBRは2024年3月末で1.0倍を超える水準で推移しています。

このように順調なスタートを切った「VISION2025」ですが、PBR1.0倍を超えることが我々の最終目標ではなく、引き続き企業価値向上に努めます。

そのために、投資を強化していくことで成長牽引事業のさらなる成長を促し、再構築事業は構造改革をスピードアップすることで資本効率の早期改善を推進し、「VISION2025」で想定した目標を上回る2025年度実績をあげることで、PBRのさらなる上昇を目指します。


株価純資産倍率(PBR)の推移


資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応


「VISION2025」においては、最終年度となる2025年度にROE10%以上、有利子負債資本倍率(D/Eレシオ)0.6倍以下、親会社所有者帰属持分比率35%以上という目標を掲げ、前中期経営計画「VISION2023」で進めてきた事業体質の改善をさらに推進しています。また、資本コストや株価を意識した経営を実現するために、より積極的な株主還元策を実行するとともに、ROICを新たな財務指標に加えることにより資本効率の改善を図っています。

当社におけるROICの定義は、「(税引後事業利益+持分法損益)÷投下資本(株主資本+有利子負債)の期中平均」としていますが、全社のROIC目標に加えて事業部門ごとに簡略化したROIC目標を設け、部門単位でのROICの予実管理を行える体制を整えることにより、自部門の資本コストの把握や資本効率改善活動の定着化を進め、2025年度においてROIC9%以上を目指していきます。

具体的には、部門ごとにハードルレートに対して自部門がどのような位置にあるのかを把握し、ROICを改善するために何をすべきかを検討したうえで、その内容をもとにCEO・CFOによる事業ポートフォリオの評価を定期的に実施します。その中で、想定どおりの実績を上げているのか、上げていないとしたら何が原因かといった検証を行い、ROIC目標達成に向けてキャピタル・アロケーションに基づいた適切な資源投入を行っていくとともに、必要であれば事業ポートフォリオの再編も実施していきます。


損益影響を回避する為替リスクヘッジ


当社グループはグローバルで事業展開をしていることから、売上収益や事業利益が為替変動の影響を受ける体質となっています。この為替影響度の軽減に向けて、生産を海外から国内に移管する国内回帰や、無線システム事業を中心に海外売上比率の向上を進めています。以前はUSドルが1円円安になると約3億円の損失が発生していましたが、現在は約1.5億円程度まで損失が減少してきています。

また、為替変動による損益への影響を回避(ヘッジ)するために為替予約を実施しています。為替予約の目的は、為替変動による影響を少なくして損益を安定させることです。M&T分野のOEM事業における受注案件では、受注が確定した時点で為替予約を行い、S&S分野の無線システム事業やM&T分野のアフターマーケット事業では、1年ほど先の為替予約を定期的に行っています。

これにより、足元で為替の大きな変動があった場合でも、為替を予約している期間は損益への影響がほぼ発生しなくなります。その間に生産地の変更や価格対応といった為替対応策を講じることにより、将来の為替リスクをヘッジしています。


株主還元方針について


「VISION2025」の策定にあたり、株主・投資家の皆さまのご期待や、当社の経営環境および資本状況を踏まえて、株主還元方針を変更しました。

変更後の株主還元方針は、従来の配当に加え、中長期的な利益成長に向けた資本活用、資本効率性改善効果のバランスを踏まえつつ、機動的な自己株式取得を行っていくこととしました。これにより、株主還元の指針を従来の配当性向から総還元性向に変更し、総還元性向の目安を30~40%と定めて、これまで以上の株主還元を実行していきます。また、当面は総還元額のうち4割程度を配当に、6割程度を自己株式取得に充てる予定です。

この考え方に基づき、2022年度の配当は、まず普通配当として7円、また、当該年度の業績が2008年の経営統合後において最高水準となったことや、固定資産譲渡益を計上したことから特別配当として5円、合わせて12円としました。加えて約40億円の自己株式取得を行ったことにより、総還元額は約60億円となり、2022年度の親会社の所有者に帰属する当期利益に対する総還元性向は、約37%となりました。

また、2023年度の配当は、当初普通配当8円を予定していましたが、業績が好調に推移したこともあり、約25億円の自己株式取得を行い期末配当も12円に増配しました。その結果、2023年度の総還元額は約43億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する総還元性向は、約33%となりました。これらの株主還元策の実行により、「VISION2025」期間での現在までの総還元額の実績は約103億円となりました。

なお、2024年度の配当は、1円増配となる13円を予定しており、このうち5円は中間配当として実施する予定です。


株主還元方針

還元方針:総還元性向 30~40%を目安とする

配当:安定的な配当かつ継続的な増配を目指す

自己株式取得:財務健全性の維持、成長事業への投資を確保しつつ、総還元性向の範囲内で機動的に実施


株主還元比率

一株当たり配当金推移(円)


株主還元実績

時期 内容 金額 原資
2023年5月 2022年度配当 約20億円
(12円/株)
2022年度利益
2023年6月 自己株式取得 約40億円 2022年度利益
2023年12月 自己株式取得 約25億円 2023年度利益
2024年5月 2023年度配当 約18億円
(12円/株)
2023年度利益

キャピタル・アロケーションの最適化


「VISION2025」においても、キャッシュ・フローの創出に重点を置き、使途を明確化した上で効果的なキャッシュ・アウトを実行していきます。

3カ年のキャッシュ・インに関しては、営業キャッシュ・フロー約900億円に事業や資産の売却などによる約100億円のキャッシュを加えた1,000億円を想定しています。2023年度の実績は、営業キャッシュ・フローが332億円、資産売却などによる収入が61億円となり、順調な滑り出しとなりました。

また、3カ年のキャッシュ・アウトに関しては、既存事業の拡大・維持に必要な成長投資として約650億円を、また、戦略投資として約350億円をそれぞれ使用していく計画です。2023年度の実績は、成長投資として195億円、戦略投資として新社屋建築費用や関係会社への増資などの新規投資で26億円、株主還元で90億円、借入金返済で63億円となりました。

戦略投資の目安については、新規事業への投資として150~200億円、株主還元として100~130億円、借入返済として50~100億円としていますが、現在は株主還元を先行して実施している状況となっています。今後は、事業ポートフォリオの成長牽引事業向けを中心に、M&Aなど成長に向けて必要な投資を実施していく予定としており、そのための案件リストの作成を行っています。案件の具体化については、CFO主催の投融資検討会で投資対効果の検証やリスクの確認といった項目を多角的に検討し、その後所定の手続きにのっとり機関決定を行った上で、投資を実行していきます。


キャピタル・アロケーションの考え方

税務方針の開示


当社グループは、企業理念に基づき高い収益性を確保するとともに、企業としての社会的責任を果たすことにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取り組んでいます。これは、法令、企業方針、社会慣習および正しい企業倫理の遵守によって実現されると考えています。

この考え方のもと、納税に関してはいわゆるタックスヘイブンを利用した租税回避などの行為は従来から行っていませんが、税務方針として公表するとともに、引き続き公明正大な納税に努めていきます。